木と漆の器

 私たち二人はともに木が好きで、その中でも轆轤(ろくろ)に魅力を感じ、木工轆轤を用いて木の器をつくっております。そして、その木の器を一番安全で丈夫に、美しくしてくれる塗料が漆だと思っております。

 木の器は焼物と比べ割れにくく軽いです。また、熱伝導率が低いため保温性が高く、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままを保ち、熱いものを入れても外側は熱くならず、冷たいものを入れても結露しにくいのが特徴です。ですから特にお年寄りや子供、そして器を手に持つ文化の日本に適した器といえます。

 私たちは木が好きだから、木が美しいからその木目を生かすように主に拭き漆という方法で漆を塗っております。漆というと朱色や漆黒というように黒を思い浮かべる方が多いと思いますが、もともと漆は茶褐色の液体です。拭き漆というのはそのとったままの漆を薄く塗っては拭いて研いでの繰り返しで薄い膜を重ねていきます。この拭き漆という方法は木地の表面をとてもきれいに仕上げておかなくてはなりません。ちょっとの木の毛羽立ちや木に対する圧力で漆を塗った時しみ込み加減の違いでムラになってしまうからです。通常漆の器の場合、木地は木地師、塗りは塗師というような分業がなされておりますが、それではきれいな拭き漆の器は出来ません。私たちは木地づくりと漆塗りを一貫して行うことで、拭き漆が出来る木地づくりと木目を最大限生かした拭き漆ができるのだと思っております。

 人は森から生まれたといわれるからか、木は人を和ましてくれます。  長い年月を生きてきた木を使い捨てるような粗末な扱いをしたのでは木に申し訳がありません。自然からの贈り物である木と漆に新しい命を吹き込み、器として送り出したいと思います。

 

任 性珍(イム ソンジン) 大石祐子